長男に負担が集中しがちなお墓やお寺の「管理費とお布施」ですが、収入的にきびしかったり、お寺の格式が高くてお布施が続かない‥
「長男全額負担」というのは世の中の長男さん(夫婦)は逃げたくなるような言葉ですね。
お墓の維持管理費やお寺のお布施は長男(夫婦)だけ?
という問題をとり上げたいと思います。
また、兄弟などに経済的な負担を分けることができるのか?分ける場合にはどんな方法やパターンがあるのか?をお話ししたいと思います。
倫理的にはお墓を継いだ長男の負担になる
長男がその家のお墓やお寺に関する費用を負担するのが一般的ですが、
まず、基本的な知識としてお墓の所有権について確認していと思います。
厳密に「お墓は誰のものか?」というと、
お墓などの所有権は、祖先の祭祀を主宰すべきものが承継する、
と法律で定められています。
「祖先の祭祀を主宰すべきもの」というのは、その家の代表として葬儀や法事を執り行う立場にある人の事を指します。
つまり、すでにお墓を長男さんが継いでいれば、お墓の所有権は長男にあり、お墓の管理維持に関わる費用や、お寺へのお布施(法事費用)は、長男さんが負担となります。
ちなみに、
お墓や仏壇というのは、「祭祀財産(さいしざいさん)」と呼ばれ、
これらを引き継いだ人のことを「祭祀承継者(さいししょうけいしゃ)」と言います。
法律上の義務はありませんが、一般的には葬儀や法事を祭祀承継者が代表して行う事が多いです。
祭祀承継者になると、遺骨の所有権も持つことになるので、亡くなった人の遺骨の管理も祭祀承継者がするのが一般的となっています。
また、祭祀承継者は民法で1人だけと定められているので、兄弟間で複数人が祭祀承継者になることはできません。
お墓やお寺をまだ継いでない人(長男)の場合
もし、長男だけどまだ親が健在で、今現在その親が祭祀承継者としてお墓を管理したり、法事を行っている場合だと、
その祭祀承継者(親)から
「お墓や法事をあなた(長男)に任せる」
と、
まだ指名されていなければ拒否することも可能です。
詳しくは以下の記事を参考にされて下さい。
[box04 title="お墓の継承について"]長男だけどお墓を継ぎたくない!法律上は放棄や拒否ができる?[/box04]
自分の思いや事情を説明して、他の兄弟に承継者になってもらうか、誰も継ぐ人がいない場合は、墓じまいする事も考えなければなりません。
本家の長男一家しか入れないお墓の場合
代々本家の長男・妻・子(長男)しか入らないお墓の場合だと、そのお墓を継いだ長男がお墓の管理を全て負担するのが一般的です。
ちなみに当サイト管理人(以下:私)の実家も父が代々のお墓の管理とお寺とのお付き合いを全て負担しています。
お寺さんに依頼して行う故人の回忌法要なども、代々本家に関わる法要なので、長男やその家族が中心となって行うのが普通です。
他の兄弟は自分達の代でそれぞれお墓を用意しなくてはならないので「本家のお墓は長男が管理する」という認識です。
しかし、次男や三男などの他の兄弟であっても、自分の実家のお墓にあまりにも無関心でいるわけにはいきません。
お墓が旧墓地・新墓地などの数か所に点在していて数が多かったり、
お寺への寄付金・お布施が多くてとても檀家を続けられない(住職の考えについていけない)といった場合、
長男の相談に乗ったり、問題解決にむけて兄弟間で話し合いをしたりと、協力体制も必要です。
他の兄弟も同じお墓に入るなら費用を分担できるかも
仮に、次男や三男が生涯独身などの理由から「自分が死んだら本家のお墓に入らせて欲しい」と言うなら、
何かしらお墓の管理やお寺のお布施の負担を一部お願いする事も可能だと思います。
ただ、他の兄弟が精神面・身体面での病気で働く事が難しく、収入も十分でない場合だと費用の援助をしてもらうのは難しいですが…。
これは当人同士の話合いで決められることがほとんどですが、
法的にも
「祭祀承継者(お墓を管理する長男)の承諾を得ればお墓に入れる」
とされています。
次男や三男に収入があるなら、実家のお墓に入れる条件と引き換えに何かしらの援助を提案することもありだと思います。
親の遺産は墓守の長男が多くもらうのもあり
お墓の維持・管理や、お寺との付き合いは「お金・労力・時間」が本当にかかります。
寺院墓地や霊園にあるお墓は管理費が必要だし、
お寺の檀家だと、
- 法話を聴きにお参りしたり
- 役員の仕事
- 婦人部だと精進料理作り
- お寺や墓地の掃除
- 寄付金
- お彼岸、大晦日、お盆、正月といった時期ごとの法要のお参り
などなど、お寺にもよりますが忙しい所は毎月何かしら行事があるという所もあります。
親の代からお寺を引き継ぐことは、そのお寺を護持する役割を継ぐことになります。
檀家がお寺を支えているので、何かしら出向くことも多いし、お寺の修繕費や駐車場を拡大する費用の寄付金なども檀家のお布施です。
こういった事情を他の兄弟が知れば、長男が遺産を多く継ぐことを承諾するのではないでしょうか?
(今まで親に任せっぱなしで何もしてこなかった人(長男)だと信頼が無く、遺産を多くもらうのは難しいと思いますが…)
親が亡くなって遺産の分配の話し合いの際に、お墓やお寺を継ぐ長男が、他の兄弟より多くもらう提案をするのも一つの手です。
「納得いかない」と言われるなら、どれだけお墓やお寺に「お金・労力・時間」が必要かを示す資料を作成するのもいいのではないでしょうか?
どれだけ大変か分かっていない人ほど反対してきたり、感情的になる傾向がありますが、まずはよく話し合ってみましょう。
長男が「墓じまい」や「檀家をやめる」と言ったら
お墓の管理やお寺の付き合いが負担で、長男が「もう無理だ」と悩んだ末に「墓じまい」や「檀家をやめる」といった結論を出した場合、他の兄弟が
長男の負担に無関心で非協力的だったり、少しの援助もしていなかった場合、
長男が墓じまいをしてお寺も辞めると決断しても反対や意見するべきではありません。
ただ、長男に代わって次男や三男などの他の兄弟の誰か1人が祭祀承継者を継ぐ覚悟があり、
「お墓の管理とお寺との付き合いも自分が引き継ぐ」と言うのであれば、こういった人が長男の決定に対して意見・反論する立場にあると言えるでしょう。
先祖を大切にする気持ちは大切ですが、情を切り離さないと墓じまいや離檀の問題は解決しません。
感情論ほど話し合いが進まないものはないので、実家のお墓を処分したりお寺を辞めるといった話し合いで大切な事は、
「お墓やお寺を辞める=先で先祖を粗末にしない感謝を込めた最善の策」
という事に全員が目を向けることも大切です。
法事の「御霊前」兄弟が包む金額が援助になる
法事に招待された人は「御霊前 又は 御仏前」というのを用意しますよね?
実家の法事などで次男や三男といった他の兄弟が出席する場合、きちんと包む気持ちのある兄弟だと内心助かりますが、
あまりにも少ないと法事を執り行う側の長男に費用の負担が大きいです。
- お仏壇の準備
- お寺へのお布施
- お膳の用意
- 法事のお返し
といった様々な準備で費用がかかるので、口に出しては言えませんが、出席するほかの兄弟には大人1人あたり1万円程度は最低でもお願いしたいものです。
(この金額はあくまでも私の実家の法事の例ですが…)
長男の負担を援助してもらう為にも、他の兄弟には法事に招かれた際に御霊前に色をつける事で、労いの気持ちを表してもらうのもいいと思います。
お墓やお寺のお布施の負担で揉めまくったら…
身内同士の話し合いでまとまらないなら、第三者に介入してもらって解決に導く方法もあります。
あまりにも他の兄弟が無関心・他人事として非協力的でない場合、家庭裁判所で親族関係調整調停を利用する手もあります。
親族関係調整調停とは、以下のような内容です。
親族間において、感情的対立や親などの財産の管理に関する紛争等が原因となるなどして親族関係が円満でなくなった場合には、円満な親族関係を回復するための話し合いをする場として、家庭裁判所の調停手続きを利用することができます。
調停手続きでは、親族関係が円満にいかない原因などについて、当事者双方から事情を聴いたり、必要に応じて資料等を提示してもらうなどして事情をよく把握して、解決案を提示したり、解決のために必要な助言をします。
出典:裁判所 COURTS IN JAPAN
ちなみに、私の母は遺産相続で揉めて、母を含めた兄弟5人で10年以上あれこれ話し合いました…。(団塊の世代なので兄弟多い)
母の実家の相続問題は手続きや資料作成などは司法書士さんに手伝ってもらっていましたが、話し合いに関しては兄弟だけで行っていたようです。
親族関係調整調停を使うのもありかなと思います。興味のある人は深堀して調べてみて下さい。
まとめ
・お墓を継いだ人がお墓の管理費やお寺のお布施等を全額負担するのが一般的
・親が健在で祭祀承継者として指名されてなければ拒否できる
・代々長男一家しか入れないお墓だと他の兄弟に負担を分けるのは難しい
・遺産相続でお墓とお寺を継ぐ長男が多くもらう方法もありだと思う
・負担が大きすぎて維持管理が無理なら「墓じまい」や「離檀」も考える
・長男が祭祀承継者なら長男にお墓やお寺との付き合いの決定権がある
・他の兄弟は法事の御霊前(御仏前)で援助する方法がある
・お墓やお寺のことで揉めまくったら「親族関係調整調停」
今回は、「一般論・色んな家のパターン・個人的な意見・法律を交えた話・経験から得た知識」を記事に込めてみましたが、
結局はその家の解決方法は当事者同士の話し合いによるところがほとんどです。
私は弁護士でも何でもありませんので、この記事の内容は参考程度ということでご了承いただければ幸いです、
みなさんの問題が少しでも良い方向に前進することを願っています。