「離婚を考えていた夫が先に亡くなった」
「夫の死後は自由になりたい」
「義父母との関係を終わらせたい」
様々な理由から夫と同じお墓に入りたくないという女性が多くいます。
結婚した夫婦はお墓も一緒に入るのが一般的な中で、妻が夫の死後に実家のお墓に入るにはどうすればいいのでしょうか?
今回は、
夫の死後同じお墓に入らない!妻が実家のお墓に入る方法
をご紹介したいと思います。
妻が夫と同じお墓に入る法的な義務はない
「妻は夫のお墓に入るもの」日本ではこのように考える人が多く、実際に妻が義実家のお墓に入るのが一般的とされています。
しかし、全ての妻が夫と同じお墓に入る選択をするとは限りません。
表面上は差し当たりなく振舞っていても、夫婦としての有り様が顕著に現れるのが「お墓」です。
妻が実際に行動を起こさなかった場合、親族によって夫のお墓に入れられる事がほとんどでしょう…
しかし、夫婦には同居義務(民法752条)がありますが、
パートナーが死亡したあとに
お墓まで一緒にしなければならないという法律はありません。
つい、戸籍上は一緒だからお墓も一緒…?と考えてしまいがちですが、
お墓は法律が定める一定のルールを守っている限り、自分の意志で選べるのが原則です。
多くの人が夫のお墓に入るのは、あくまでも慣習上の話に過ぎないのです。
お墓を別にするなら死後離婚?
「死後離婚」という言葉を聞いたことがありますか?
「夫が亡くなってから、夫と離婚する」という何ともインパクトの強い言葉ですね。
しかし、この「死後離婚」というのは造語であって、法律上の制度ではありません。
さらに、夫が亡くなってから、夫と離婚するのは法的に不可能です。
配偶者が死亡した場合、いわゆる「死別」となるのですが、死別の場合、配偶者との婚姻関係は離婚届などの書類を提出することなく終了します。
わざわざお墓を別にするからといって、死後離婚の必要もなく、「配偶者の死亡=婚姻関係終了」となるのです。
婚族関係終了届を出さなくてもお墓は別にできる
「夫の死後、義父母などの儀実家親族との関係を切りたい」と願う場合だと
婚族関係終了届
(こんぞくかんけいしゅうりょうとどけ)
という届け出があります。
先ほど、夫(配偶者)と死別したら婚姻関係は終了すると言いましたが、
夫が亡くなったからといって、自動的に夫の親戚との関係が消滅するわけではありません。
何もしなければ義父母や親族との関係は継続します。
夫側の親族との縁を切るためには「婚族関係終了届」を市区町村の役場に提出すればいいのですが、
この届出の事を一般的に「死後離婚」と呼ぶようになっているのです。
こういったことから、お墓を別にするのにも「婚族関係終了届」を提出すればいいのかと
勘違いする方もいるようですが、「死後離婚」と「お墓を別にすること」は法的に無関係なので、
わざわざお墓を別にする為だけに「婚族関係終了届」を出す必要はありません。
ただ、夫とは別のお墓に入りたいのであれば、夫の遺族に納得してもらうのも大切です。
なかなか納得してもらえない時や、別のお墓に入りたいという意志を示す為に「婚族関係終了届」を提出するのも一つの方法でしょう。
夫の死後、妻が実家のお墓に入る方法
夫の死後、同じお墓に入らないのであれば、自分がどのお墓へ入るのかを決めないといけません。
そこで特に希望が多いのが「妻の実家のお墓」です。
実際に妻が自分の実家のお墓に入る事は可能ですが、それを叶えるためには生前からきちんと希望を伝えておく事が大切です。
では、妻が自分の実家のお墓に入る為の3つのポイントを紹介します。
ポイント1・墓地の管理規則に従うこと
実家のお墓が建っている墓地の管理規則を確かめる必要があり、管理規則は墓地によって独自に定められています。たとえば、
- お墓に入れる人数の制限
- 宗教・宗派が異なる人は入れない
- 宗教・宗派が異なっても受け入れるが、祭祀は仏教式のみ
- 親族しかお墓に入れない
なでどです。
実家のお墓に入る場合だと、血の繋がった親族なので、墓地の管理規則に反しないケースがほとんどだと思いますが、念の為にもきちんと確認しておきましょう。
ポイント2・祭祀承継者の承諾を得ること
祭祀承継者(さいししょうけいしゃ)というのは、いわゆるお墓を継いで管理・供養をしている「墓守」の事を言います。
葬儀や法事を代表して行う人などがそれにあたりますが、たいていの場合、
祭祀承継者が墓地の使用契約の名義人となっているので、その人からの承諾を得る必要があります。
実家のお墓だから承諾は簡単に得られると考えがちですが、
「どうして嫁ぎ先のお墓じゃダメなの?」
と簡単には受け入れてもらえないこともあります。
まだ親が元気なら子供可愛さに受け入れてもらえるかもしれませんが、代が変わって兄や弟といった横の関係になった場合や、
兄や弟が亡くなっていて、その嫁が実家のお墓の祭祀承継者となっていた場合だと、
仲が良くないと頼れないといった状況も考えられます。
墓地の所有者は管理費を支払ったり、お寺との関係を良好に保つ苦労があったりすることから、
何の負担もないまま実家を出た者を受け入れる事に抵抗感を示すこともあるのです。
ポイント3・姓(名字)が違っても大丈夫
法的には「姓が同じでなければ、同じお墓に入る事ができない」
といったルールはないので、姓(名字)とお墓は別問題です。
しかし、家墓では「○○家之墓」と刻まれたお墓が多く、代々その家の長男が守って来たお墓に他家の名字の人間が入ることに難色を示す人もいます。
別姓の人を埋葬すると、その人が埋葬されている事がわかりにくい問題も出てきます。
それを解消するには墓石などに自分の姓を彫ってもらうか、墓石の傍らに墓誌(石碑)をたてて名前・亡くなった日付などを彫ってもらう方法もあります。
「旧姓に戻せばお墓に入っていい」と言われたら?
「実家のお墓に入りたいなら嫁ぎ先の姓ではなく、旧姓にもどせばお墓にいれてもいい」
と言われるケースもあるかと思います。
このような場合には、元の名前に戻すのも一つの方法でしょう。
配偶者に先立たれた場合、名字(姓)を変えられないと考える人もいますが、遺された妻は「復氏届(ふくうじとどけ)」を提出することで、婚姻前の氏に戻すことができます。
ただし、復氏届けで姓が戻るのは本人だけで、子供の姓や戸籍はそのままなので
子供の姓まで変更したい場合は別途、「子の氏の変更許可申立書」を家庭裁判所に提出して許可をもらいましょう。
まとめ
・夫の死後は「死別」となり、離婚届を出さなくても婚姻関係は終了する
・夫側の親族との縁を切るためには「婚族関係終了届」を提出する
・お墓を別にする為だけなら「婚族関係終了届」は必要ない
・嫁いだ女性でも実家のお墓に入る事は可能
・名字(姓)が違っても大丈夫だが、「復氏届」で旧姓に戻す事も可能
こうしてみると、夫の死後に妻が実家のお墓に入る事に関しては、法的な縛りが何も無いことになります。
ただ、状況に応じて「婚族関係終了届」や「復氏届」が必要なケースもありますが、基本的には妻本人の意思表示と周りの理解による部分が一番重要です。
周囲の理解と協力が必要なことから、時間と根気が必要になるでしょう。
実家のお墓以外にも納骨堂や樹木葬も安い値段から契約可能です、気になる方は以下の記事も参考にされてみて下さい。
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